蒙霧升降(ふかききりまとう)は七十二候のひとつで、立秋(りっしゅう)の末候にあたります。深い霧がまとわりつくように立ちこめる時期を表しており、朝夕の気温差が大きくなることで霧が発生しやすくなる季節の変わり目を伝えています。
目次
意味と由来
「蒙霧升降」は、「蒙(ふか)き霧(きり)升降(まとう)」と読みます。「蒙」は「覆いかぶさる・深い」という意味を持ち、「升降」は霧が立ち昇ったり降りてきたりする動きを表しているとされています。訓読みでは「深き霧まとう」とやわらかく読み下され、霧が風景を包み込む情景を浮かび上がらせます。
立秋を過ぎると、日中はまだ暑くても朝晩の気温が次第に下がり始めます。この気温差が水蒸気の凝結を促し、早朝や夕方に霧が発生しやすくなるのです。山間部や水辺では特に霧が出やすく、幻想的な風景が広がります。
霧は日本の風景において独特の美的価値を持ち、古くから和歌や絵画の題材とされてきました。俳句では霧は秋の季語とされており、立秋の末候に霧の候が置かれているのは暦の構成として理にかなっています。
この時期の自然と暮らし
- 朝霧の風景 — 山間部や盆地では早朝に霧が立ちこめ、雲海のような幻想的な風景が見られることがあるとされている
- 処暑への移行 — 立秋の末候を過ぎると次の節気「処暑」に向かい、暑さが徐々に収まり始める
- 赤とんぼの飛来 — アキアカネなどの赤とんぼが山から里に降りてくる時期にあたるとされている
- 夜の虫の声 — コオロギやマツムシなど秋の虫たちの合唱がにぎやかになる
補足・豆知識
気象学では、視程が1キロメートル未満の場合を「霧」、1キロメートル以上10キロメートル未満の場合を「靄(もや)」と区別しています。七十二候の「蒙霧」は、深い霧が辺り一面を覆う濃い状態を指しているといえるでしょう。
日本には「霧島」「霧ヶ峰」など霧にまつわる地名が数多くあります。また、「朝霧」「夕霧」「川霧」「海霧(じり)」など、時間帯や場所で異なる呼び名を付けてきたのは、霧が暮らしに深く関わってきた証です。
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