橘始黄(たちばなはじめてきばむ)は七十二候のひとつで、小雪(しょうせつ)の末候にあたります。橘(たちばな)の実が黄色く熟し始めるようすを表しています。
目次
意味と由来
「橘始黄」は「橘が始めて黄ばむ」と読み下すことができます。常緑樹である橘が、冬を迎えるこの時期に実を黄色く色づかせるさまを暦に記したものです。
橘(ヤマトタチバナ)は日本に自生する唯一の野生柑橘類とされています。『古事記』や『日本書紀』には、田道間守(たじまもり)が常世の国から「非時香果(ときじくのかくのこのみ)」すなわち橘の実を持ち帰ったという伝説が語られており、橘は不老不死の霊果として古くから神聖視されてきました。
橘は文化的にも重要な植物で、京都御所の紫宸殿には「左近の桜、右近の橘」として植えられています。また、文化勲章のデザインにも橘の花が用いられており、日本の伝統と格式を象徴する植物のひとつとされています。
この時期の自然と暮らし
- 柑橘類の実り — みかんや柚子など、さまざまな柑橘類が色づき収穫の時期を迎える
- 柚子の活用 — 柚子風呂や柚子味噌など、冬ならではの柚子の楽しみ方が広がるとされている
- 師走の準備 — 年末に向けて年賀状の準備やお歳暮の手配が始まる時期にあたる
- 冬の庭仕事 — 庭木の冬囲いや霜除けなど、植物を寒さから守る作業が行われる
補足・豆知識
橘と現代のみかん(温州みかん)は別の品種ですが、いずれも柑橘類として日本の冬を彩る果実です。温州みかんは江戸時代に広まったとされ、現在では冬の果物の代名詞として親しまれています。一方、ヤマトタチバナは野生種として自生地が限られており、環境省のレッドリストにも掲載されています。
橘の花は初夏に白い小さな花を咲かせ、その香りは古来「花橘」として和歌にも多く詠まれてきました。実が黄色く色づくこの候は、冬の柑橘類の恵みとともに、日本人と橘の長い歴史を思い起こさせる季節の節目といえるでしょう。
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