蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)は七十二候のひとつで、小満(しょうまん)の初候にあたります。蚕(かいこ)が目覚めて桑の葉を盛んに食べ始めるようすを表した候です。
目次
意味と由来
「蚕起食桑」は、「蚕起きて桑を食む」と読み下すことができます。小満を迎えるころ、卵から孵化した蚕の幼虫が桑の葉を旺盛に食べ始め、日に日に大きく育っていくとされています。
蚕は絹糸を生み出す昆虫として、古くから日本の産業と暮らしに深く関わってきました。養蚕(ようさん)の歴史は古く、日本では弥生時代にはすでに行われていたとする説もあります。江戸時代から明治時代にかけて養蚕業は日本の主要な産業となり、「お蚕さま」と敬称をつけて呼ぶほど、蚕は大切にされてきました。
七十二候に蚕が取り上げられていることは、かつて養蚕が日本の農村にとっていかに重要であったかを物語っています。
この時期の自然と暮らし
- 桑の葉の生長 — 桑の木が青々とした葉を茂らせ、養蚕農家では蚕に与える桑の葉を摘む「桑摘み」の作業が行われたとされている
- 麦の穂の充実 — 秋に蒔いた麦が穂をふくらませ、黄金色に色づき始める時期にあたる
- 初夏の花々 — バラやカーネーションなど、初夏を代表する花々が見ごろを迎えるとされている
- 梅雨の走り — 西日本を中心に梅雨入りが近づき、蒸し暑い日が増え始める時期とされている
補足・豆知識
蚕は完全に家畜化された昆虫で、野生では生きられないとされています。幼虫は自力で桑の木に移動することができず、人の手で桑の葉を与えなければ育つことができません。このため蚕は「人に飼われることで生きる虫」として、家畜化の極致ともいわれています。
蚕が繭を作るまでには約一か月かかり、その間に体重は約一万倍にもなるとされています。一頭の蚕が作る繭からは、約千二百メートルから千五百メートルもの絹糸がとれるといわれています。群馬県の富岡製糸場をはじめ、日本各地には養蚕に関する歴史的遺産が残されており、蚕と日本人の長い歩みを今に伝えています。
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